観劇記録

戦う者の歌を聴かせて

Les Misérables 2021/6/16M

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増原さんのお名前切れちゃった…

福井バルジャン

最近シュガー続いたから久しぶり。
福井バルって基本的に外殻が非常に厚い男で、その外殻が完全になくなるのが燭台を渡されるとき、外殻が一瞬薄くなるのがコゼットに「話してよ過去の真実すべて」と言われたとき、というイメージがある。
増原司教はこの日も「闇からあなたを主は救いたもう」と語り掛けるように言っていて、福井バルは言っていることはわかるが受け入れたくない、という顔をしていた。
わかっている、でも受け入れたくない、なぜなら、受け入れてしまうとこれまでと同じ自分ではいられなくなるから。それを無意識的に理解していて、だから燭台を返そうとする。それまでの自分を守ろうとする。
死んで生まれ変わることの痛みだよね。
波止場、「私がした」のところ。
この日、めぐファンテだったんだけど、ファンテがその他の労働者の女たちと同じではなくて、何かしら特徴があるタイプだったんだろうなと思った。ファンテを個別認識してる気がする。
めぐファンテは賢くて、職場のローカルルールの矛盾を指摘して改善提案を出すタイプだと思ったから、市長はそれ聞いてルールきちんと作ったことがある。そういう意味で市長とファンテの間に信頼関係がある。
対テナ。自分も同じ洞穴から出てきたからこそ「この手合いか…」みたいなげんなり顔をしてる気がする。
印象的だったのはエピローグで「私は父じゃない」のとき、どうみても顔も声も(お前は私の娘だ)って言ってる。死別は確定的で、だからこそコゼットを安心させるために(ここで別れるけれどお前はずっと私の娘だよ)そういう仕草をしてる。
たしかにコゼットからすれば、死に際に「私は父じゃない」は突き放されてるように感じるかもしれなくて、だからコゼットを安心させるようなこの言い方好きだったな。

濱田ファンテ

「賢くて正しいんだけど空気が読めない女」なんだと感じた。
「何一つ秘密ないとあんたたちは神に誓える?」のところも冷静で、賢いの。生まれる場所や時代が違えばバリキャリやってた感じ。
そしてその手の賢くて正しい女が嫌われる職場、という…
ファンテはそれぞれに地獄があって、そこで働く女たちも明日ファンテの立場になるかもしれないのが二宮ファンテで、特別な女(賢い女、美しい女)がめぐファンテ、知念ファンテというイメージ。
夢やぶれても「夢は帰らない」が完全に正気。賢いので自分の現状を完璧に理解している。つらい。

生田エポ

たぶんABCくらいは読めるので「私も読めるわ」って言ってるんだけどマリウスの本開いた瞬間思ったより難しい単語並んでて「は?(読めない)」って顔してた。
印象的なのはプリュメ街でりりかコゼットに助け起こされるところで、顔を隠す、俯くどころの話じゃなく「弾かれるように」後退ってコゼットを避けてて、ここまで露骨な反応するエポは珍しいと思ったし、ほんとエポコゼ反転してもおかしくないからこそしんどいな…と思った。
エポニーヌがバルジャンに手紙渡して恵みの雨なのは、あそこで「コゼットの父親」が優しく紳士的で、テナルディエや自分の置かれた状況との対比がしんどくなっての…って話だと思ってるから、エポコゼ反転してもおかしくないのはほんときついんだなあ

谷口マダムテナ

うっすら寂しそうで、現状を肯定しきれないマダムなんだよね。こうなりたくてなったわけじゃない感じ。
だから、エポニーヌがもし砦で死ななかったら、こうして現状への不満を抱えつつも生きるために犯罪をしなければいけない、このマダムみたいになったのではないかと思えてしんどい。
テナインでマダムがパンを切るところ、左手のナイフでパンを固定するけどあれ一度外れちゃって怖かった…

竹内マリウス

この日は柴原モンパとりりかコゼットの間に入るところでもそんなに「よわい」って感じしなかった。
木内アンジョとの並びがやっぱりよくて、同期〜!ってなるし、シュッとして精悍な印象のアンジョとキラキラかっこいいマリウスなのでなんとなく上山海宝の並びのよさを思い出した。
恵みの雨のあとでエポニーヌのコートをかき集めているのを見て、体を隠してあげている…と思った。あとこの回ではなかったかもしれないけど、エポニーヌの眠りが少しでも安らかであるように、抱きしめながら揺れてたときがあった気がする。
バルジャンの告白、「会えば別れがつらい、このまま行こう」のところで、はぁ?の顔してて、対シュガバルだとあんまり見なかったやつだと思った。で、バルジャンの左手がマリウスの右肩から二の腕のあたりにあるじゃない?このときの竹内マリウスは福井バル見つめたまま、自分の左手でさっとバルジャンの手を取り払ってた。(振り払うまではいかない)
対シュガバルよりは塩っ気が薄め(だが塩ではある)

木内アンジョ

なんかもうびっっくりした…。人当たりのいいアンジョというか、きちんと周りの学生の反応を拾うアンジョで、いわゆるカリスマ!って感じの役作りではないなと思ってたから、最期びっくりして、でも唐突な感じはしなくて、それは多分ちゃんとそこに至るまでの芝居を積んでるからなんだけど、とにかくびっくりした、し、刺さった…
恵みの雨のあと、下手に運ばれていくエポニーヌの遺体を見送ったアンジョルラスとグランテールの視線が交わるじゃない?あのとき、丹宗グランテールはガブを抱きしめながら木内アンジョに、責めるまではいかないけど問いかけるような目をしていて。
少女が死んで、子供が泣いてる。これがお前の目指したものなのか?
それに対して木内アンジョは気圧されるように、一瞬後退りしていて、このアンジョルラスは理論では死者が出ることはわかっていたけど、ここでようやく現実的に死というものに直面しているんだと思った。
で、最期。
木内アンジョはガブ死でショックを受けて座って、からのアーミーオフィサーの声、絶望に叫ぶ砦の中、自分を奮い立たせるように体を殴りながら、すっくと立ち上がって、深呼吸して、クルフェたちを振り返りながらの「死のう」は平静かと思ったら不敵に笑ってた。
ガブ死で頭飛んでるんだと思ったし、「命を高く売り付けてやろう」だとも思ったけど、とにかくびっくりした…

覚書

最近もちフェ続いてたので冒頭でバルジャン蹴り飛ばした今井看守がにやっと笑ったの見てきたきたきたー!とテンションあがった。
ここ持木看守はバルジャンのこと見下してるけどビジネスライクなのに比べて、今井看守は日常から囚人を虐待していそうで、バルジャンが牢獄で過ごした19年、人間として扱われてこなかった19年に思いを馳せる。

丹宗グランテールのフェンシングに応戦する深堀レーグル、割って入る木内アンジョ。グランテールがあんまり反省ないのに比べ深堀レーグルの「やべっ…」感よ。
深堀レーグルといえば、恵みの雨でぺっそぺそになってる竹内マリウスの後頭部に慰めるように手をやって、優しく「マリウス」と促してエポニーヌから手を離させる姿も印象的。深堀レーグルの周りいつも3度くらい温度高い。
今井クルフェが5度くらい高いタイプだからこの日の砦の上手…気温高そう…って思った