観劇記録

戦う者の歌を聴かせて

フェリス女学院大学音楽学部舞台芸術ゼミ16期の卒業公演レ・ミゼラブル

フェリス女学院大学音楽学舞台芸術ゼミの卒業公演レ・ミゼラブル行ってきたのでそのまとめ。

フェリスレミゼ

バルジャン、ジャベール、マリウス、アンジョルラス、テナルディエ、学生アンサンブルが客演の方で、他は全員フェリスの学生さんかな?

1幕、石切場から始まったものの、基本は新演出ベースかなと思いきや、2幕は今は消えてるメロディ(ジャベスパイバレ後のガブソロ、バルジャンの告白のところ冒頭等)がいっぱい出てきて楽しかった!
教育機関の卒業公演らしくファンテのくだりや宿屋はマイルドになってた。

印象的だった改変は、ミリエル司教がシスターになっていたことと、恵みの雨のあとの学生たちの振る舞い。

ミリエル司教のプチソロはシスター、女性の澄んだ声で語られることでメロディの美しさが際立って、ああここは神(代理ではあるけれど)の語り掛けなんだなと改めて思った。背景に映し出される、日の光が差し込む教会の写真も美しくて(教会は「光の建築」と呼ばれる)バルジャンの暗い人生に差し込んだ光、差し出された救いの手が、目に見え耳に聴こえる形を取ったようだった。

それと、シスターが去り際にバルジャンに燭台手渡したとき、少し微笑んで頷いていて、それがすごく良かった。後述するけどこのバルジャンは正しさを探してるというか、自分の選択が正しいものであるように願ってる人に見えたからなおさら。

もう一つ印象的な改変が恵みの雨のあと。DwMのオケのメロディとともに学生たちがエポの死を悼んでいた。このエポはABCカフェにもいたし「仲間の一員」だったんだなあって思った。

これはオケの話だけどバルジャンの独白の「パン一つの罪で(just for stealing a mouthful of bread)」のあとのジャジャーン!が物凄く強く響いて…このときバルジャンが何かを見上げて衝撃受けてたんだけど、同じところで本舞台(CM社のレミゼ)ではバルジャンが背景の教会を見てたとこだと思う。
ここでバルジャンには教会の上の十字架がきっとものすごく大きく、うわって目に入ってくるんだろうなぁって今更ながら気付いた…。ここのオケの強調が本舞台で観てるときよりもよく響いたんだよね。

さてバルジャン。
これは正しいか?と迷った自分の選択が、本当に正しくあるように願ってる人であり、自分の選択を正しくするために頑張る人。聖人ではなく神が見えているわけでもない、等身大の人だなと思った。

その彼が初めて迷わずに心から沸き上がった衝動が「まだ若い彼の代わりに私を死なせて」というBHHなのかなと。

このBHHのあとだからガブローシュの死がつらくて…
字幕あんまり見てなかったけど、マリウスとアンジョを止めたバルジャンが「君たちはまだ若い、代わりに私が」みたいな訳出されてたと思う、その直後だから。一番幼い子供が死んでしまった。

ジャベールは、「バルジャンに成り得たジャベール」だなと思った。

容易に感情を表さないし悟らせもしないが、堅実に実績を積み上げてきたのがわかる叩き上げ鉄面皮タイプ。…だけどバルジャンに逃がされて戻ってきたバリケードで、若者たちの死体(ガブの死体?)を見下ろしてどこか悼んでるように見えた。
バルジャンに逃がされて自分が信じてたものが揺らぎ始めて、戻ってきて見たのは未来ある子供の死体で。揺らいだまま下水道の出口で、若者であるマリウスを生かそうとするバルジャンに会って崩れる…どこかで何かが違えば「若者を生かす」側に回っていた、そういうジャベールだと思った。
あと、スターズの最後の歌い上げアレンジすごくて星が大爆発してた。

総じて、バルジャンやジャベールのありようから、教育機関でやるレミゼであり、若者を送り出すはなむけとしてのレミゼであり…というのをすごく感じたレミゼでした。

ところでファクガとマダムテナやってたのは同じ子だと思うんですがどこかで舞台のお仕事されてる子なんでしょうか…「あの子は誰」しちゃった※ミュージカル部の助演の方だった!