観劇記録

戦う者の歌を聴かせて

Les Misérables 2021/7/17S

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このチームさ、胃が痛そうな人多くない?(ぷくバル木内アンジョもちフェ)

この回の感想はほぼ砦なんだけど、この日、今年からの新キャストもみんな役に生きてる!って思って良かった…。
彼らが普段どんな感じで会話してるのかとか、どんな生活してるのかとか、あの板の上以外の生活の気配がすっごいして、その中にいるから学生のおたくは学生の一人になった気分なんだよねって改めて思った。
学生の一人としてあの中で生活してるから、砦で一緒に死んでる…

福井バルジャン

この日、今年初めてファンテ看取ったときの福井バルジャンの表情見えた…。ごくごく一部の席でしかちゃんと見れないんだけど、ここの福井バルジャンの表情が好き。
この日は、二宮ファンテの体から力が抜けたのを感じたあとで悔恨めいた、苦く噛み締める顔をして、ふっと目を開けて視線が上にすいっと流れていって、ファンテの魂が召されるのを見たかのようで、すごくよかった。

二宮ファンテ

ずっと混乱してて、どうしてこんなことになってしまったのかわからないまま、波止場に行き着くファンテ。
二宮ファンテは庇護が必要なファンテだと思うのと同時に、ファンテが孤児であることを思い出すファンテだと思う。
これは原作の話になってくるけど、都市で親兄弟の庇護がなく一人で生計を立てなければならない女工たちは、同じく都市で独り暮らしをする裕福な学生たちの遊び相手になった。
ファンテの相手であるトロミエスもまたそういう学生で、トロミエスはファンテを捨てたあとで社会的に成功してることも原作に書かれてる。
ファンテには、そんな男はいけないと言ってくれる人がいなかった。彼女は孤児だったから。
二宮ファンテは貧しくて、庇護が必要で、だからトロミエスと付き合い、捨てられて、身籠っていて…というのが想像できるファンテだと思う。

竹内マリウス

ABCカフェ、「君も今夜居合わせたなら僕のこの思いわかるだろう」あたりだったかな?竹内マリウスが上手奥の階段に行く前に、木内アンジョの胸を叩いていてふふってなった。(木内アンジョは砦落ちるときに自分の胸を叩くの印象的だから…)
この日はすごくABCカフェも砦でもみんな役に生きてたから、カフェソングはすごくつらいだろうな、と思った。マリウスは逝き遅れたんだなと。
この回でも、バルジャンの告白のときにバルジャンが座れるように椅子の端に座って福井バルジャンを待ってて、福井バルジャンが椅子の後ろに回ったとき(座らないのか…)ってしょんとしてて可愛かった。
彼は5月からこの7月まで色々試してたし、バルジャンによってもいろいろ変えてるけど、一貫して「ハンカチ吸うわ」という確信がある。

木内アンジョ

一幕、木内アンジョがすっごいアンジョだなぁ〜って思って脳内麻薬が出すぎてあんま覚えてない…
ABCカフェで、岩橋フイイが「みんなが平等だ」だったか言ってて、アンジョが頷いててすっごく良くて。
フイイは、あの当時で言えば恵まれた学生たちの中にあって労働者という特異な立場で、そのフイイが「みんなと同じ」であるという自己認識を持っていて、それを当たり前に口にできて、首領がそれに頷くのが、普段のABC友の会がどんな雰囲気なのかわかる。
Red and Black最後あたり、木内アンジョが近くにいた大津クラクスー学生や横田プルべを見ながら、自分の胸をトン、と叩いててよかった。
二幕の砦。
DwMで、フイイ、プルベと歌い継いでるときに鈴木コンブが砦を昇って、笑いながらアンジョと話して、上手の上に戻ったときに持木クルフェとも話してて。そこでちょうど丹宗グランテールが歌い出して、クルフェとコンブが後ろ見て笑ってたし、「過ぎた日に乾杯」あたりでは砦の下でも「かんぱーい!」って学生たちが盛り上がってた。
丹宗グランテールの「死も恐れぬか」でみんなの空気が変わって田川モンパ学生が「人の気持ち考えろよ」ってグランテールに掴みかかって、砦の上のほうでは鈴木コンブが降りようとしたとき、木内アンジョが降りてきてた。
「死など無駄じゃないのか、偽りじゃないか」
丹宗グランテールの言いたいことはたぶん完全には木内アンジョには伝わりきってなくて、でも木内アンジョは理解したい気持ちがあるから、なんとなく心配めいた表情をしてる気がした。(オフマイク「無駄じゃないんだ」ってアンジョは言ってたらしい)
グランテールを追ってガブローシュが上手に行き、木内アンジョは砦の下手の上に向かう。アンジョと入れ替わるようにバルジャンが下に降りていく中でマリウスの「死んでもいいさ…」
木内アンジョは、たぶん上手の丹宗グランテールを見てたし、丹宗グランテールも木内アンジョを見上げてた。
やがて二人の視線が切れて、木内アンジョは砦の中、上手の下、下手の下、と見下ろして、途中で持木クルフェと頷き合ってから砦の外に向き直っていた。
最後の戦い。
木内アンジョは重松ガブの遺体を丹宗グランテールに渡して、しゃがんだまま俯いている顔に悔いのようなものが浮かんだ。
そして鳴り響くアーミーオフィサーの声、アンジョは立ち上がって砦を握りしめながら砦の外を見る。この時点ではまだ重心が安定していない。でも恐慌の砦でひとり、顔を伏せたまま目を閉じて、掌で自分の左胸を叩く。目を開けたときには重心が安定していて、そこで「死のう!」
まるで目を閉じたときに(俺たちは負けるのか?俺たちは間違っていたのか?俺たちの理想は間違っているのか?…いや!)と自問自答したかのようだった。自問自答してから、(俺たちは間違ってなどない!)と自分を奮起させるように、自分の胸を叩く。
「勝ち目はないのだ、止めろ死ぬ気か」
アーミーオフィサーにそう言われても、自分たちの理想の正しさに確信を持っているからこそ、投降することはできない。
私は、木内アンジョはみんなの投票によってリーダーになった首領だと思ってて、その彼がみんなで育てた理想の正しさを確信し、この戦いは正しいのだ、と肯定する。流された血の意味も、これから流れる血の意味も肯定され、救済される。
最期にグランテールに引き起こされたとき、木内アンジョは笑って「ありがとう」って言ってて、このグランテールの気持ちの伝わってなさというかDwMでグランテールが言ってたことが本当の意味ではわかってないであろう、無邪気で残酷な輝かしさが、あーーーーアンジョルラスだぁ………って思ってすっごく良かった、最高だった。
アンジョルラスも何期かやるとグランテールの言うことに納得しはじめてしまうから、この無邪気で残酷な輝かしさはアンジョルラス一期目にしかない。美しくて最高だった。
あと、木内アンジョは死体になっても拳を握ってるので(拳を掲げて撃たれて墜ちるからなんだけど)、大切なものをずっと握ってる人だなあと思って泣いた。
そんなこんなで今年初めて砦で一緒に戦って死んでたんですけど、なんとかカフェソングには意志の力で蘇生したら「ああ友よ聞くな、散り果てた意味を」のところで、上手のほうに歩きかけていた木内アンジョが立ち止まって微かに竹内マリウスを振り替えって、ふっと笑って、俺は後悔してないよ、ってことだと私は思って、そこでまた泣いた。
カフェソング、竹内マリウスは木内アンジョを見てるし、木内アンジョも(マリウスの幻覚ではなく)本人として存在しているよね。
木内アンジョは一緒に進むアンジョで、背負いたい気持ちがある人で。そういう意味では上山アンジョにも似てるし、砦が落ちるにあたって自分の理想の正しさを改めて確信するところはリオンジョにも似てる…と2015年の砦が好きだった者としては思った。

持木クルフェ

一幕パリで、下手の二階の人にビラを渡そうとして振られてた。
二幕。
持木さん、たぶんキャストの中でも大人だからなのもあると思うけど、砦でみんなを導いてきたことを背負うんだけど、木内アンジョは一緒に背負ってくれる人だよね。
木内アンジョの「死のう」のとき、持木クルフェはこの結果を、ここに皆を導いてきたことを悔やまないかといえば悔やむけど、たぶんあのときアンジョが理想に確信を持ってたから救われるんだな…と思って泣いた

覚書

・深堀酔っ払いが両手にボトル掲げてふらふら歩いてくの可愛くて好きなんだけど、時々あきらかフランスじゃない踊りしてるよね
・恵みの雨のあと、竹内マリウスをめちゃくちゃ慰めてる深堀レーグル好き。後頭部ぽんぽんして頭ぽんぽんしてなんか話してた

・丹宗盲人さんが入ってきたときの肉屋さんが胸の前で両手クロスさせてかわいいポーズしてた

・農場で大津農夫がバルジャンから渡されたイエローチケットを周りに見せながら「イエローチケットだよイエローチケット」って言ってた

・農場、バルジャンに対して斎藤農夫を盾にしてちっちゃくなってる木内農夫が可愛かった